糖尿病

糖尿病とは?

 血糖値を下げるホルモンである「インスリン」の作用不足に基づく慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群と定義されます。

 インスリンがうまく働かないため食べた栄養素(糖質)がうまく利用されないため、「血液中に含まれるブドウ糖が多くなる=血糖値が高くなります」。またインスリンの作用不足により、糖質だけでなく脂質・蛋白質を含むほとんどす べての代謝系に異常をきたします(脂質異常症、筋減弱症=サルコペニアなど)。

様々な種類の糖尿病

インスリン効果が不足する機序には、

  • インスリン供給不足(絶対的ないし相対的)
  • インスリンが作用する臓器(細胞)におけるインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)

とがあり、遺伝因子と環境因子がともに関与します。


これらの機序により、

  • 1型糖尿病(急性発症1型糖尿病・緩徐進行1型糖尿病・劇症1型糖尿病)
  • 2型糖尿病
  • 2次性糖尿病(ステロイドや抗精神病薬などの薬剤性糖尿病、甲状腺機能亢進症・クッシング症候群などの内分泌疾患に伴う糖代謝異常)
  • 妊娠糖尿病など種々の糖尿病

に分類されます。

糖尿病の治療とは?

食事療法

  • 適正な食事摂取カロリーの設定:身長・体重から計算するBMIと日常身体活動より計算します。
  • 食べる順番:野菜・主菜を順に食べて、最後に炭水化物を摂取すると食事による血糖値の上昇が改善することが示されています。
  • 食事の速さ:早食いは、満腹中枢が満腹を感じる時間が経たないうちに、どんどんと食べ過ぎてしまうことが問題です。一口一口良く噛んで、味わって食べることが大切です。
  • 糖質摂取量:糖質は摂取カロリーの50-60%が適正とされています。当院では極端な糖質制限はお勧めしていません。夕食の炭水化物摂取量を減らすなど無理なく日常に取り入れる緩やかな糖質制限を指導しています。
  • カーボカウント:1型糖尿病の患者さん、インスリン分泌が枯渇しているインスリン依存性の2型糖尿病の患者さんについては、摂取エネルギー量を設定した上で、摂取した糖質量に併せたインスリン注射の設定が大切です。インスリン治療中で血糖コントロールにお困りの方はご相談ください。

運動療法

 安全第一、無理をしない、継続できる運動、できれば自分自身が楽しめる運動、がお勧めです。また時間をとって行う運動だけでなく、日常生活の運動量自体を増やすことも血糖コントロールには重要です。

 肥満患者さんや高齢者糖尿病患者さんでは筋肉減少(サルコペニア)も問題となるためレジスタンス運動の要素も取り入れ、有酸素運動と組み合わせて行うと効果的となります。

 一方で1型糖尿病患者さんなどインスリン注射を行っている方は運動中の低血糖の危険も考慮しなければなりません。補食の摂取、FGM導入など指導致します。お気軽にご相談ください。

薬物治療

 インスリン作用不足を軽減する種々の治療手段(経口糖尿病薬・GLP-1受容体作動薬・インスリン注射など)によって代謝異常を改善することで糖尿病合併症を防止し、普通の方と変わらないQOL、健康寿命を目指すことが治療の目的です。一人一人のライフスタイル・病態に合わせたベストな治療法を提案致します。


 糖尿病は代謝異常が軽度であればほとんど自覚症状がないため長期間放置されることがあり、気づかないうちに合併症が進展している危険があるため糖尿病は別名「サイレントキラー」とも言われます。さらに高血糖が著しく高くなるような状態では、口喝・多飲・多尿・体重減少がみられ、極端な場合は、ケトアシドーシスや著しい高血糖・高浸透圧状態をきたし、意識障害、さらに昏睡にいたり、適切な治療が行わなければ死に至ることもあります。

 健診などで血糖値異常を指摘された方、糖尿病が心配な方、上記症状がある方はお気軽にご相談ください。

糖尿病の合併症!!

 血糖値が高い状態が長く続くと、糖尿病特有の合併症が出現します。眼(網膜)・腎臓・神経を代表とする多くの臓器に機能・形態の異常をきたしますが、これらの合併症に共通するものは細い血管の異常(細小血管障害)であり、進展すれば視力障害、時には失明、腎不全、下肢壊疽などの重大な結果をもたらす可能性があリます。

3大合併症(細小血管合併症):「しめじ

  1. 神経障害(んけいしょうがい)
  2. 網膜症(目=
  3. 腎症(んしょう)

さらに糖尿病は動脈硬化(太い血管の合併症)も促進し、心筋梗塞、脳卒中、下肢の末梢動脈疾患などの原因となり生命をも脅かします。

大血管症:「えのき

  1. 下肢の壊疽(そ)
  2. 脳梗塞(うこうそく)
  3. 心筋梗塞(しんんこうそく)

また血管合併症だけでなく、「がん」、「認知症」、「睡眠時無呼吸症候群」、「不眠症」、「歯周病」、「骨粗鬆症」、などの病気との関連が示されています。

糖尿病の検査、合併症の検査

HbA1c、血糖値

血糖値と血糖値の1-2ヶ月の平均値であるHbA1c値(HPLC法)を院内で測定します。受診したその日に結果が分かるため、ontimeで糖尿病治療に活かすことができます。

尿検査・尿中アルブミン

尿糖・尿潜血・尿蛋白、尿中ケトン体を測定することで、糖尿病性腎症および糖尿病性腎症以外の腎臓の病気の検索、体内の代謝の状態を推定することができます。尿中アルブミンは早期糖尿病性腎症の有無を調べるための検査です。

DPNチェック・CVRR

糖尿病性神経障害、自律神経障害の有無を調べる検査です。CVRRは心電図で測定を行います。神経障害は細小血管障害の中でも最も早期に出現してくる合併症と言われています。またフットケアの必要性を考慮する上でも重要な検査です。

ABI、CAVI

足の血管の閉塞の有無(閉塞性動脈硬化症)、動脈硬化度(血管年齢)を測定します。糖尿病以外でも高血圧や脂質異常症などの動脈硬化リスクのある病気を持たれている方にも必要です。

頸動脈エコー

脳梗塞のリスク評価の上で大事な検査です。動脈硬化度の検査と同様、糖尿病以外でも高血圧や脂質異常症などの動脈硬化リスクのある病気を持たれている方にも必要です。

腹部エコー(肝・胆嚢・膵臓など)

脂肪肝の有無、インスリンを分泌する臓器である膵臓など糖尿病患者さんにとっても大事な検査です。近年脂肪肝からの肝臓がん発生が増加しています。年1回程度の検査をお勧めいたします。

心エコー・心電図・24時間心電図(ホルター心電図)

心エコー検査は、心臓の動きや収縮能力、弁膜症の有無などが検査できます。

心電図やホルター心電図は、狭心症、心筋梗塞の有無や、心房細動など各種不整脈の有無を調べるために大事な検査です。

特に心電図や心エコーは、経時的な変化を見ていくことも大事な検査ですので年1回程度の頻度で検査を受けられることをお勧め致します。

骨密度

糖尿病患者さんでは骨折リスクが増大します。特に1型糖尿病患者さんでは骨量減量のリスクもあり、定期的な検査を行い骨折を予防に努めましょう。

睡眠ポリグラフ

睡眠時無呼吸症候群があると糖尿病コントロールが悪化し、睡眠時無呼吸症候群の治療で血糖値も改善することが示されています。イビキ・昼間の眠気がある方、家族やパートナーのイビキ・無呼吸が気になるかたは、御相談ください、積極的に検査をお勧めいたします。

当院で可能なその他の検査

1日推定塩分摂取量

高血圧合併患者さんに有用ですが、糖尿病の患者さんでも塩分の多い食事はご飯もすすみ、ついつい食べ過ぎてしまっているかもしれません。尿検査で簡便に測定できますので、治療に活かしてください。

甲状腺エコー

当院では数多くの甲状腺疾患の治療も行っております。甲状腺疾患のある方には定期的なエコー検査をお勧め致します。

肺機能検査

気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患、タバコ肺)の有無を調べる検査です。吸入前後で比較することで気道可逆性も検査を行うことができます。

  • 健診などで血糖値異常を指摘された方
  • 糖尿病が心配な方
  • 上記症状がある方
  • 合併症がご心配な方

は、お気軽に受診・ご相談ください。

ふじはら内科クリニックでは?

日本糖尿病学会専門医・指導医であり、さらに日本内分泌学会専門医・指導医である院長が専門的診断・治療を行います。